サッカーの第19回ワールドカップ南アフリカ大会は、スペインがオランダを延長戦の末に1対0で倒し、初優勝を果たしました。私にとって意外な結果となりました。ブラジル、アルゼンチン、イタリア、イングランドなどの国と同様にスペインもサッカー王国です。したがって、このスペインが過去に一度も優勝したことがなかったという事実が不思議でもありますし、何か理由があるようにも思えました。
世界最高峰とも言われる国内リーグを誇りながら、過去18回の中で、代表の成績が振るわなかったのには、どうも大きな歴史的な背景があるようです。それは、日本ではほとんど見られないスペイン国内の各地域の民族意識であると考えます。特に、バスクやカタルーニャなど内戦や内乱を繰り返してきたという悲痛な歴史的背景や、そこから生まれるサポーターの「クラブ至上主義」が代表チームに大きな関心が向けられなかった要因です。
オリンピック同様、ワールドカップにおいても、「スポーツと政治は別」という選手が増え、スペインでも代表のユニフォームに誇りが生まれました。特に、2年前の欧州制覇でそれが形となり、さらに国民の目も代表チームに熱く注がれるようになりました。
W杯で優勝が決まったその夜、スペインの首都・マドリードではあちらこちらの路地から「ソイ・エスパニョール」(私はスペイン人)という大合唱にわき、カタルーニャの街では、今までタブーとされていたスペイン国旗が振られたといいます。
スペインの経済は、不動産にバブル崩壊と20%を超える失業率、財政赤字など、危機的状況を迎えています。スポーツと政治は、無関係でなければならないのですが、しかし、スポーツは経済に多少なりとも効果があります。それを考えるならば、元気のいいスポーツづくりは、国内経済に大きく貢献することができると言えるのではないでしょうか。
一方で、日本サッカーは、この大会を通して、世界のどの位置にいるのか、また何が欠けているのか、また今後の課題は何なのか、ということが徐々に明確になってきました。ある人は、「フィジカル(肉体)が弱い」といい、ある人は、「得点能力が低い」と指摘し、さらに、ある人は監督の責任論を問題にします。今回の日本代表の活躍を通して私が感じたことは長時間モチベーションを持続するための粘り強さといい意味でのハングリー精神、愛国心のようなものが、実は一番大切なのではないか…と思いました。
長嶋一茂
〜月刊「美楽」9月号より〜 |